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③単純承認・限定承認と相続放棄の関係は?

相続放棄は、「相続しない」という効果を発生させる相続の方法の一つですが、相続の方法には他にも単純承認、限定承認という方法があります。相続放棄については別の記事で詳細に説明していますので、ここでは単純承認、限定承認について少し説明したいと思います。

 

<単純承認>

 まず単純承認ですが、これは亡くなった人の財産や負債をそのまま受け継ぐという、もっとも一般的な相続方法です。相続の8割以上はこの単純承認という方法で行われています。

 この単純承認をするための手続方法ですが、何もありません。他の相続方法(限定承認・相続放棄)を選択できる期間が3ヵ月ですので、それを経過した時は自動的に単純承認された事になります。

 もっとも、以下のような行動を取った時は、3ヵ月が経過していなくてもその時に単純承認をしたとされてしまいますので、限定承認や相続放棄を検討している方は注意して下さい。

①相続財産を処分した時

 →亡くなった人の財産を一部でも処分してしまうと、財産全体を受け継ぐ意志があると認定されてしまい、それ以降は限定承認や相続放棄ができなくなります。といっても、亡くなった人の名義で契約している光熱費や葬儀費用など、相続財産の中から支払ったとしても単純承認したとみなされない費目もありますので、詳しくはご相談下さい(→相続放棄を諦めないで!で詳しく説明しています。)。

②限定承認や相続放棄をした後に相続財産を使い込んだ時など

→限定承認や相続放棄した人が、その後に、相続財産を隠したり勝手に使い込んだ場合は、限定承認や相続放棄をせずに単純承認したことにされてしまいます。限定承認をする時は家庭裁判所に財産目録を提出するのですが、その財目録にわざと相続財産の一部を載せなかった時も、後でそれが判明すれば単純承認したことにされます。

 自分で財産を管理していると、つい使ってしまうこともあるかもしれません。相続放棄や限定承認をした場合は、自分の財布と相続人の遺産をしっかり区別したうえで、早急に財産の管理を相続財産管理人に委ねてしまいましょう。

 

<限定承認>

 限定承認とは、亡くなった人の財産の範囲内でまず借金を返し、もし財産が残ればそれを受け継ぐ、という相続方法です。財産が残らず借金が残った場合、その借金は受け継がないことになります。

 ・・・そんな都合のいい方法があるのか!?と思われるかもしれませんが、これは法律上認められた相続方法です(民法922条に書いてあります)。じゃあ、みんなとりあえずこの方法で相続すればいい!とお考えになるかと思います。・・・しかしこの方法、手続が非常に面倒であるうえ税金面でデメリットが大きいこともあって、実際は年間1000件前後しか行われていません。相続の年間件数が100万件以上なので、0.1%以下という数字です。そんな特殊な手続ではありますが、一応、簡単に説明しておきますね。

 限定承認するには、財産目録を作成したうえ、相続人全員連名で家庭裁判所に申立を行わなければなりません。(申立書やその記載例、添付書類の解説などはこちらからダウンロードできます。(http://www.courts.go.jp/kyoto/saiban/katei/houki/index.html

 まず財産目録の作成ですが、これが一仕事です。記載例をご覧いただければ分かりますが、土地や家屋、自動車などの評価額を記載する必要があるのです。限定承認の申し立てが可能な期間は人が亡くなってから3ヵ月なので、その間に相続財産に何があるのか、それらはどれだけの価値があるのかを判明させなければならないことになります。

 次に相続人全員連名での申立が必要な点も、この手続を困難にさせています。相続人が誰か判明しており、全員が近隣に居住しており関係も悪くない、そんな場合でなければ3カ月以内の「全員連名」を整えるのは困難な場合があるからです。また、相続人の一部と音信不通になっている場合には家庭裁判所に不在者財産管理人を選ぶよう申し立てる必要があるなど、さらに手続を困難なものにしています。

 他にも、限定承認が認められたあと、その日から5日以内に、亡くなった人にお金を貸していた全ての人等に、限定承認したことを公告しないといけない、という手間も発生します。

  これらの手続的な難しさから、限定承認手続は滅多に行われない手続になっています。またここでは述べませんが税金面でも不利な制度になっていることもこの手続が行われない大きな理由になっていると思われます。いずれにせよ、この手続を検討されたい方は、可能な限り早く、手続面と税金面の両方の専門家に相談するようにしましょう。

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